2017 年 78 巻 11 号 p. 2508-2513
症例は73歳,男性.30年来の痔瘻の既往あり.2014年頃より肛門部腫瘤を自覚していたが放置していた.2016年1月,腫瘤の増大を認め近医を受診した.肛門管癌を疑われ,精査加療目的に同年4月に当科紹介となった.肛門辺縁の3時から7時方向に肛門外に突出する5cm大の肛門腫瘍を認めたが,肛門管には異常を認めず,痔瘻癌を疑った.生検にて高分化型管状腺癌を検出.また,術前精査にて直腸S状部に全周性の2型病変を認め,生検にて高分化型管状腺癌を検出.痔瘻癌の診断基準より原発性痔瘻癌とは診断できず,組織型が類似していたことより直腸癌,転移性痔瘻癌と診断した.肛門機能温存は困難であったが,根治切除可能と判断し,侵襲性を軽減するため腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織学的検査にて原発性痔瘻癌の可能性も考えられたが,免疫組織学的検査を行い直腸癌と同型であることを確認し,転移性痔瘻癌と診断しえた.