ペースメーカー(PM)植込み側に乳癌が発生すると,治療上,様々な問題が生じる.自験例3例のうち,乳房温存治療を希望した1例ではPMを対側に入れ替えて乳房部分切除術後,全乳房照射を行った.PMの入れ替えが困難な症例では,PMが切除範囲内に含まれていないことから全乳房切除を施行した.リンパ節転移陽性であったが,PMへの影響を考慮し,術後放射線治療は断念した.PM感染を繰り返した症例では,PMと病変が近接しており,その境界が不明瞭であった.PM入れ替え後に乳房切除を施行したが,病変内に含まれていたリード線を切断し,先端を埋没させる必要があった.いずれの症例でも術後心機能の変化を認めなかった.今後の高齢化に伴いPM併存の乳癌発生が増加してくることが考えられるため,その治療選択は術前十分に検討されるべきである.