2017 年 78 巻 2 号 p. 354-358
症例は60歳,男性.慢性C型肝炎による肝細胞癌に対して,肝後区域切除術,肝動脈化学塞栓療法,ラジオ波焼灼術を行ってきた.2015年12月に腹部超音波検査とCTで脾臓に35mmの孤立性腫瘍を認め,肝細胞癌の脾転移が疑われた.AFPとPIVKA-IIは高値を示したが,造影CTとMRIで肝内再発は認めず,脾腫瘍は肝細胞癌の転移と考えられた.2016年1月に破裂の危険性回避,長期生存を期待して脾摘術を行った.被膜の播種性変化は認めなかった.
摘出標本では脾実質に35×32mmの黄色で被膜を有し,膨張性に発育する腫瘍を認めた.組織学的に肝細胞癌の脾転移の診断であった.脾門部リンパ節の転移は認めなかった.
今回,孤立性脾転移をきたした肝細胞癌の1例を経験したので報告する.