2017 年 78 巻 4 号 p. 727-732
症例は81歳,男性.検診で便潜血検査陽性となり近医を受診した.下部消化管内視鏡検査で,上行結腸に30mm大の腫瘍性病変が認められた.生検では高度異型腺腫または超高分化型腺癌の診断で,加療目的に当科紹介となった.術前スクリーニング目的に施行した上部消化管内視鏡検査で偶然十二指腸上行部に隆起性病変が認められ,生検では高分化型腺癌と診断された.十二指腸癌の内視鏡治療の適応につき専門施設に紹介したが,粘膜下層浸潤の可能性が高いと診断され,開腹による同時手術の方針となった.手術は十二指腸部分切除および回盲部切除術を施行した.早期十二指腸上行部癌は非常に稀で,スクリーニングでの早期発見は困難な病変である.今回われわれは,上行結腸癌の術前スクリーニング検査で早期十二指腸上行部癌を発見し,同時切除を施行したので,文献的考察を加え報告する.