日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
上腸間膜動脈閉塞下に切除した大量出血を伴う径30cmのデスモイドの1例
山中 美歩山口 竜三渡邊 真哉會津 恵司三輪 知弘有元 淳記
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 78 巻 4 号 p. 748-753

詳細
抄録

症例は61歳,男性.腹痛,腹部膨満で受診した.腹部は著明に膨隆し,心拍数125回/分,血圧92/68mmHgだった.造影CTで腸間膜内に23.1×12.4cmの腫瘍を認め,腫瘍内に造影剤の血管外漏出を認めた.活動性の腫瘍内出血を伴う腹腔内腫瘍の診断で緊急手術を施行した.巨大腫瘍により上腸間膜動脈(SMA)へのアプローチが困難と予想された.開腹前に右大腿動脈を穿刺し,SMAをPTA用のバルーンカテーテルで閉塞し,血行動態を安定させた.開腹すると,空腸間膜内に30×25cmの腫瘍を認め,約70cmの空腸とともに腫瘍を摘出した.病理組織学検査で小腸間膜原発のデスモイド腫瘍と診断した.術後経過は良好だった.膿瘍形成や穿孔により緊急手術を施行した腹腔内デスモイドは数例の報告があるが,腫瘍内出血により緊急手術を施行した症例の報告はなく,稀な症例を経験した.

著者関連情報
© 2017 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top