日本臨床外科学会雑誌
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症例
腸間膜脂肪織炎との鑑別に苦慮した悪性腹膜中皮腫の1例
徳久 晃弘上野 富雄新藤 芳太郎鈴木 伸明武田 茂永野 浩昭
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2017 年 78 巻 4 号 p. 842-846

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抄録

症例は66歳,男性.アスベストの暴露歴はなし.発熱と腹痛を主訴に前医を受診し,血液検査で軽度の炎症所見と腹部CTで腸間膜脂肪織濃度の上昇を認め,腸間膜脂肪織炎と診断された.絶食・抗生剤治療により軽快退院となった.その後半年間,同症状で3度入退院を繰り返し,ステロイド導入が検討された.悪性疾患除外のため,腸間膜脂肪織の腹腔鏡生検目的に当科紹介入院となった.術中所見にて,CTの病変部に一致して軽度肥厚した大網が腹壁に癒着し,腹水を少量,腹膜全体に黄白色の粟粒結節を多数認めた.大網を一部生検し,腹水を細胞診に提出した.組織学的検査により悪性腹膜中皮腫(上皮型)と確定診断した.悪性腹膜中皮腫は特異的な臨床症状や検査所見がないため,腸間膜脂肪織炎様症状を繰り返す場合は悪性腹膜中皮腫を念頭に置いて治療を行う必要があると考えられた.

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