2017 年 78 巻 5 号 p. 1138-1143
3例の巨大鼠径ヘルニアを経験し,いずれもtransabdominal preperitoneal repair (TAPP法)で修復したので報告する.症例1は85歳,男性.左巨大鼠径ヘルニア,日本ヘルニア学会分類I-3型.症例2は84歳,男性.COPDと下肢閉塞性動脈硬化症の既往あり.左側II-3型.症例3は65歳,男性.左側I-3型.いずれもヘルニア内容は小腸で,ヘルニア嚢との癒着はなかったため,気腹後,体外圧迫を加えることにより,容易に還納は可能であり,長径15cmのメッシュで修復した.いずれも経過は良好で,術翌日あるいは翌々日に退院した.巨大鼠径ヘルニアに対するTAPP法は,鼠径部切開法に比べ,ヘルニア嚢とヘルニア内容との癒着が軽ければ還納がより容易である点,大きなヘルニア門を視認しながら確実にゆとりをもって腹膜前腔にメッシュを留置できる点で有用と考えられた.