2017 年 78 巻 8 号 p. 1710-1714
症例は64歳,女性.左前胸部の無痛性腫脹を主訴に来院.左乳房上部が右に比して明らかに膨隆していた.左腋窩に硬い可動性のない左腋窩リンパ節を触知した.腫瘍マーカー正常,画像検査所見では乳房内に異常所見を認めず,多数の著明に腫大した腋窩リンパ節と大胸筋および小胸筋の肥厚を認めた.左腋窩リンパ節生検を施行したところ乳癌の転移と診断され,画像所見と合わせ潜在性乳癌と診断した.ホルモン受容体陽性であったためレトロゾールを投与したところ,大胸筋の膨隆は徐々に縮小,腋窩リンパ節も縮小し,治療開始後1年たった今も増悪傾向を認めず治療継続中である.
潜在性乳癌は稀であり,治療法もcontroversialで手術や放射線治療が推奨されているが,リンパ節転移があれば,サブタイプに則して術前化学療法や内分泌療法から開始する選択肢もあると考える.