2017 年 78 巻 9 号 p. 2104-2111
症例は68歳,女性.中枢神経病変を伴う悪性リンパ腫の診断となり,FDG/PETを撮影し左側頭葉,肝門部,傍大動脈および下部直腸にFDGの高集積を認めた.下部消化管内視鏡検査では下部直腸から肛門管に黒色隆起性病変を認め,生検で悪性黒色腫の診断となった.悪性リンパ腫の進行による意識障害が急速に出現したため,悪性リンパ腫に対する治療を優先し,化学放射線療法を施行する方針とした.R-MPV療法(rituximab,methotrexate,procarbazine,vincristine)を開始した結果,意識障害は消失し,FDG/PETでは直腸病変以外はpartial response: PRであった.悪性リンパ腫が奏効状態となり悪性黒色腫も治療適応と考え,腹腔鏡補助下直腸切断術を施行した.術後15カ月が経過した現在,直腸悪性黒色腫の再発はない.