2018 年 79 巻 4 号 p. 831-839
メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)はメトトレキサート(MTX)投与中に発症するリンパ腫であり,下部消化管穿孔としては本邦で報告がない.症例は69歳の男性で,悪性関節リウマチに対してMTXを内服中であった.左側腹部痛で来院し,CTで下部消化管穿孔の診断となり,緊急結腸部分切除術を施行した.切除結腸には潰瘍性病変を認め,MTX-LPD(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の潰瘍穿孔と診断した.術後吻合部不全で再手術を要したが,軽快した.2年後の現在,再発なく経過している.
本邦報告MTX-LPD 86例のうち休薬により69%が寛解し,不変・増悪・再発に化学療法を行った症例の33%は死亡していた.EBV潜伏感染の有無で予後の差は認めなかった.寛解症例の平均観察期間は20.4カ月であり長期予後は不明である.自験例のような症例では初回手術の人工肛門造設を厭わないことが肝要である.