2020 年 81 巻 5 号 p. 850-854
症例は74歳,男性.食道癌に対しESD後の追加切除として胸腔鏡下食道亜全摘術,後縦隔経路亜全胃再建の既往あり.術後2年目に感冒症状があり,かかりつけ医を受診した.胸部X線で横隔膜下に腹腔内遊離ガスが指摘され,当院を紹介受診した.CTにて右気胸,腹腔内遊離ガスを認めた.消化管穿孔部は同定し得なかった.上部消化管内視鏡検査を行ったが,上部消化管穿孔は認めなかった.試験開腹術も考慮されたが,腹膜刺激症状,炎症所見は認めず,病歴および画像検査,内視鏡検査所見から右自然気胸が経裂孔的に腹腔内に広がったことによる腹腔内遊離ガスと考えられた.同日緊急入院の上,絶食と補液での保存的加療の方針とした.入院後,気胸や腹腔内遊離ガスの増大は認めず,入院7日目に退院となった.検索の範囲では,同様の本邦報告例は2例のみであり,いずれの症例も術前の病態の把握により不必要な外科的治療を避けることができている.考察を加えて報告する.