日本臨床外科学会雑誌
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症例
CMV腸炎に続発したCPSによる出血性回盲部炎の1例
三井 秀雄吉本 恵理吉田 孝司金澤 伸郎黒岩 厚二郎
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2020 年 81 巻 5 号 p. 878-883

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抄録

症例は60歳の男性.サイトメガロウイルス(以下,CMV)腸炎の治療後経過観察中であったが,貧血を主訴に当院紹介となった.下部消化管内視鏡検査にて回盲部に粘膜発赤,浮腫および潰瘍を認めた.生検の結果CMV抗原陽性細胞は認めず,好塩基性無構造物の沈着を粘膜固有層内に認めた.患者はポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate:以下,CPS)を内服中であった.CMV腸炎再燃を考え,抗ウイルス薬投与再開すると共にCPSを中止とし保存的治療開始した.しかし,出血を伴う腸炎は改善せず最終的に腹腔鏡補助下回盲部切除施行した.術後経過良好で貧血も改善し術後10病日にて退院となった.病理組織学的検査で回腸および盲腸にびらん,潰瘍認め,粘膜から筋層内に好塩基性無構造物の沈着を認めた.核内封入体やCMV抗原陽性細胞は認められず,CMV腸炎に続発したCPSによる出血性腸炎と診断した.

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