日本臨床外科学会雑誌
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症例
横行結腸の虚血性腸炎が先行した小腸非閉塞性腸管虚血症の1例
秋重 尚貴高橋 道長嶋 健太郎上野 達也後藤 慎二内藤 広郎
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2020 年 81 巻 5 号 p. 884-889

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抄録

症例は86歳,男性.2017年7月(2週間前)に腹痛と血便が出現し,横行結腸の虚血性腸炎(ischemic colitis:以下ICと略記)と診断され,当院消化器内科で9日間の入院加療を行った.退院6日後,強い腹痛を主訴に救急外来を受診した.身体所見上明らかな腹膜刺激症状を認めなかったが,腹部造影CTで小腸と大腸の広範な拡張と門脈気腫像,および小腸の造影不良と腸管気腫像を認めたため,非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia:以下NOMIと略記)を疑い,緊急手術を施行した.開腹所見ではTreitz靱帯から270cm肛門側の小腸が150cmにわたり非連続性の腸管壊死に陥っており,壊死部の小腸部分切除および機能的端々吻合術を行った.術後経過良好であり,術後23病日に転院し,その後2年1カ月,再発なく経過している.本症例では上腸間膜動脈の支配領域である横行結腸と回腸に短期間で異時性にICとNOMIを発症した.右側型ICは左側型ICと比較して予後不良と言われているが,快復期間中に異時性の腸管虚血を発症する場合もあるので,慎重に診断,治療,経過観察を行う必要がある.

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