日本臨床外科学会雑誌
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症例
Aeromonas hydrophilaによる小腸壊死の1例
木戸口 勇気前田 一也宮永 太門服部 昌和道傳 研司橋爪 泰夫
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2020 年 81 巻 5 号 p. 901-906

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抄録

症例は64歳の男性で,既往に糖尿病,高血圧,陳旧性心筋梗塞を有していた.2017年9月に心窩部痛,嘔吐,水様便を主訴に当院を受診した.腹部造影CTでは軽度の小腸拡張を認めるのみであった.経過より感染性腸炎が疑われ,経過観察目的に入院となった.第3病日に腹痛が増悪し,血液検査ではCRP 50.6mg/dlと炎症反応高値を認め,腹部造影CTでは小腸に限局した壊死を認め,小腸壊死に伴う汎発性腹膜炎と診断した.緊急開腹手術を行ったところ,回腸末端より20cm口側の回腸が15cmに渡り壊死していた.壊死腸管を切除し,機能的端々吻合にて再建し,手術終了とした.後日,便培養にてAeromonas hydrophila(以下A.H.)を検出し,A.H.を起因菌とした感染性腸炎と診断した.術後経過は問題なく,術後15日目に退院した.A.H.感染例の中には,少なからず感染が重篤化する症例が報告されている.今回,A.H.による感染性腸炎から小腸壊死をきたし,手術により救命した1例を経験したので報告する.

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