2020 年 81 巻 5 号 p. 938-943
症例は66歳の男性で,便潜血陽性精査の下部消化管内視鏡検査で直腸Rb左壁に20mm大の0-IIa+IIc病変を認めた.通常光観察で襞の集中,NBI観察では表面構造が消失し,微小血管構造が不整であった.超音波内視鏡検査では,腫瘍エコーによる3層への塊状浸潤を認め,SM深部浸潤の診断であった.骨盤MRIで左閉鎖領域に長径10mmのリンパ節腫大と拡散強調画像で高信号を認めたため,左側方リンパ節転移陽性と判断した.T1bN3M0 cStage IIIbの診断で腹腔鏡下括約筋間直腸切除術,左側方リンパ節郭清,回腸人工肛門造設を施行した.経過良好で術後16日目に退院となった.病理結果では,pT1b(1,750μm),ly0,v0,sprouting(-),N3[(#251(1/4),#283(2/4)],pStage IIIbであった.術後補助化学療法としてCapeOX療法を開始し,経過観察中である.