2020 年 81 巻 5 号 p. 944-948
症例は72歳の女性.C型慢性肝炎に対して当院消化器内科でdirect acting antivirals(DAA)治療によりsustained virological response(SVR)が得られた.SVRから10カ月後,フォローアップのCTで肝右葉に35mm大の肝腫瘍を指摘された.画像所見で診断がつかず,その2カ月後に切除目的で当科へ紹介となった.紹介時のCTでは腫瘍は急速に増大し65mm大へ増大していた.腹腔鏡下肝S5・6の亜区域切除術を施行し,合併症なく術後7日目に退院となった.病理学的に異形円型リンパ球のびまん性増殖を認め,かつCD3染色陰性,CD20染色陽性を示した.以上の所見より,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した.DAA治療後に診断に苦慮した肝腫瘍に腹腔鏡下肝亜区域切除を施行した1例を経験した.肝原発悪性リンパ腫は稀であり,文献的考察を加えて報告する.