2020 年 81 巻 8 号 p. 1611-1615
脾動脈周囲に高度炎症を認める膵頭体部癌に対し,脾動脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy with splenic artery resection: PD-SAR)を行った.Indocyanine green(ICG)蛍光法を用いた脾臓と残膵の血流評価を行うと,脾臓の発光は良好であったが,残膵は断端より1cmの範囲で発光が不良であった.膵空腸吻合に伴う重大な膵液瘻を回避するために,残膵は非再建で縫合閉鎖した.術後の脾梗塞や膵液瘻を認めず,血糖コントロールも良好に経過した.PD-SARにおける残膵および脾臓の血流評価に,術中ICG蛍光法は有用と考える.