日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃壁に穿破し重症貧血をきたした非浸潤型膵粘液性嚢胞腺癌の1例
佐々木 晋高見 裕子和田 幸之龍 知記嬉野 浩樹今村 一歩
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キーワード: 膵粘液性嚢胞腫瘍, 穿破,
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2020 年 81 巻 8 号 p. 1616-1623

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抄録

症例は44歳,女性.生来健康で通院歴は無かった.2カ月前より腹満感・食欲不振を認め,呼吸苦を主訴に当院へ救急搬送となった.血液生化学検査にてHb:1.9g/dlと著明な貧血を認めた.造影CTでは膵尾部に13cm大の多房嚢胞性腫瘤が存在し,胃を圧排していた.上部消化管内視鏡検査にて膵尾部病変の胃壁への浸潤が疑われたが,胃病変の生検では悪性所見は認めなかった.超音波内視鏡検査では嚢胞内に壁在結節なく,膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の胃壁穿破による上部消化管出血と診断し,貧血改善後に待機的手術を行った.腫瘤は胃壁と広範・強固に癒着しており,脾合併膵体尾部切除+胃全摘術を行った.病理組織診断では標本の一部に高度異型を呈する領域を認め,非浸潤型膵粘液性嚢胞腺癌の診断となった.腫瘍と接する胃壁には腫瘍浸潤は認めなかった.非浸潤型膵粘液性嚢胞腺癌が胃壁に穿破し貧血をきたす症例は非常に稀であり,文献的考察を加え報告する.

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