2020 年 81 巻 8 号 p. 1648-1653
症例は37歳,女性.当院受診4日前から不正性器出血を認めていた.下腹部痛も出現したため,当院へ救急搬送された.腹部全体に圧痛と筋性防御を認めた.血液検査でWBCの低下,CRPの上昇を認めた.CTでは中等度の腹水を認め,びまん性に小腸壁は浮腫状であった.穿孔や腸管虚血を示唆する所見は認めなかった.経腟エコーにてDouglas窩に多量の腹水を認め,腹水迅速細菌検査で,A群溶連菌による原発性腹膜炎と診断し,緊急手術とした.腹腔内は多量の膿性腹水で満たされていたが,腸管に明らかな穿孔部位は認めなかった.腹腔内洗浄ドレナージを施行し手術を終了した.入院4日目に腹水培養,膣培養からA群溶連菌が検出された.本症は稀な疾患で,特徴的な画像所見も無いことから診断に難渋することが多い.しかし,本症例では術前婦人科診察時に腹水迅速細菌検査を施行したことで,本症を鑑別に挙げ手術を施行しえた.