2021 年 82 巻 10 号 p. 1912-1918
症例は70歳の男性で,脱力を主訴に当院を受診し,造影CTで内部に出血を伴う18×14×16cmの左後腹膜腫瘍を認めた.左副腎原発腫瘍と考えられたが,採血上機能性腫瘍は否定的であった.左後腹膜腫瘍摘出術を施行(手術時間256分,出血量400ml)し,術後第7病日に退院となった.摘出標本は菲薄な線維性結合織を壁とする嚢胞性病変で,壁内に副腎皮質細胞と思しき上皮細胞がほぼ全周性に存在し,内部に大小多数の血管が認められ,副腎血管腫性内皮嚢胞の診断となった.副腎嚢胞性疾患は副腎偶発腫瘍中2.3%程度であり,血管腫性腫瘍は副腎嚢胞性疾患の3%程度と極めて稀な疾患である.副腎嚢胞性疾患の臨床症状は非特異的であり,無症状で経過し偶発的に発見されることも多い.術前に確定診断を行うことは困難であり,症状を伴う場合に手術が選択される.今回われわれは,副腎血管腫性内皮嚢胞という病理学的に極めて稀な1例を経験したので報告する.