日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
同時性肝転移を伴うmixed acinar-neuroendocrine carcinomaの1例
河口 義邦吉崎 雄飛田中 麻理子有田 淳一牛久 哲男長谷川 潔
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 83 巻 4 号 p. 755-761

詳細
抄録

症例は69歳,男性.上腹部痛を主訴に受診した.CTで膵頭部腫瘤を認め,十二指腸浸潤・上腸間膜静脈腫瘍栓を伴っていた.また,肝に2箇所,転移を疑う腫瘍を認めた.十二指腸浸潤部からの生検にて膵内分泌癌の診断.イリノテカン・シスプラチンによる化学療法が開始され,1コース目の途中でセカンドオピニオン目的に当院を受診.前医標本の病理組織の再検討により,膵内分泌腫瘍 WHO grade 3と診断.膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019年でも,治癒切除可能病変な同時性遠隔転移を伴う膵内分泌腫瘍は切除を中心とした集学的治療を行うことが推奨されていることから,手術の方針とした.膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除+再建,肝部分切除術を施行した.切除標本による病理診断はmixed acinar-neuroendocrine carcinomaであった.S-1による術後補助化学療法を施行し,現在術後15カ月,無再発にて経過観察中である.同時性肝転移を伴う膵腫瘍に対する治療戦略は原発膵腫瘍の診断により異なるため,実臨床において示唆に富む症例と考えられた.

著者関連情報
© 2022 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top