2024 年 85 巻 2 号 p. 256-259
魚骨による急性虫垂炎の報告は散見されるが,interval appendectomy(以下IA)を施行した報告は認めない.IAを施行しえた魚骨による膿瘍形成性虫垂炎の1例を経験したので報告する.症例は80歳,男性.2日前より腹痛が出現し経口摂取困難となり,急性虫垂炎の疑いで当院へ紹介受診となった.右下腹部に圧痛を認めた.腹部CTで膿瘍内に線状のX線不透過像を認め,魚骨による膿瘍形成性虫垂炎と診断した.抗菌薬による保存的治療を行い,約6カ月後に腹腔鏡下のIAを施行した.虫垂の腫大は認めず,虫垂先端に癒着を認めたものの,切除可能であった.術後は合併症なく経過し,術後3日で退院となった.虫垂内部には魚骨と考えられる針状物質を2本認め,虫垂先端に潰瘍瘢痕を認めた.魚骨による急性虫垂炎は穿孔のリスクが高いという報告もあり,診断時に穿孔や膿瘍を認めない症例は,速やかな虫垂切除術が必要と考えられるが,既に膿瘍形成を認める場合にはIAも治療戦略の1つとなり得ると思われた.