2004 年 19 巻 1 号 p. 99_2
本論文は,異文化に属する者どうしのグループミーティングにおける協調作業を,対面コミュニケーションにおける相互理解の構築と,異文化間コミュニケーションによるアイディア創発という同時進行する二つのプロセスとして捉え,それぞれのプロセスを支援するための理論的枠組みの構築と,二つのプロセスを統合的に支援する計算機システムの設計について論じるものである.本論文は8章からなる.第1章の序論に続き,第2章では,協調作業における対面異文化間コミュニケーションの目的と必要性を述べるとともに,相互理解の構築とアイディア創発を円滑に行うための課題を述べる.第3章では,(1)ブレークダウンに着目した,対面コミュニケーションにおける知識共有と相互理解構築プロセスのモデル,(2)境界オブジェクトの役割に着目した,異文化間コミュニケーションをアイディア創発手段とするための方法論,をそれぞれ構築し理論的枠組みとする.第4章では,二つの理論的枠組みを統合するための手法として「アソシエーション」の利用を提案する.第5章では,構築したEVIDII(an Environment for VIsualizing Differences of Individual Impressions)システムの詳細,第6章では,利用観察実験とプロトコル分析の結果からEVIDIIの有用性を明らかにする.第7章では,分析結果に基づき対面異文化間コミュニケーション支援環境について考察するとともに,今後の課題と展望について述べる.最後に第8章において,本論文を総括する.