2008 年 58 巻 5 号 p. 766-774
[目的]当院の血液内科で治療されていた血友病A患者が, 鍼灸院にて鍼治療を受け腸腰筋の血腫を起し, 日常生活を著しく支障をきたした症例を報告する。
[症例]年齢は20歳代の男性。病名は血友病Aで自己注射にてVIII因子補充療法を継続中。腰部に鍼治療を受け腰下肢痛が徐々に増悪, 電気の走るような痛みが出現し, 安静時痛も強く救急車にて病院へ搬送される。以後, 自宅にて安静に。当院にてリハビリ開始。MRIにて腸腰筋に紡錘状の血腫を認めた。このような先天性の出血性疾患に対しては, 問診, 視診, 触診, 徒手検査法にて情報を収集し, 病態や重症度を把握し対応するべきである。