全日本鍼灸学会雑誌
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総説
明日に伝えるために、今こそ大変革が必要である 西洋医学よりも東洋医学の方がより本質的であるが、このままでよいのだろうか?
シリーズ「日本鍼灸を明日に伝える-東京宣言を受けて」
小川 卓良
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2015 年 65 巻 2 号 p. 79-90

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抄録

 東京宣言のシンポジウムでは、 私は 「日本鍼灸の特質 (臨床面)」 を担当した。 内容は起草委員会の討論と医道の日本誌の鍼灸業態アンケート結果を分析したものである。
日本鍼灸の中医鍼灸と違う特徴は、 第一に診断・治療の両面で 「触れる」 を重視、 第二に、 西洋医学的発想の治療或いは診断器具の開発。 第三に管鍼法や様々な細い微鍼による弱刺激治療の開発。 第四に西洋医学的発想と古典に基づいた治療の折衷。 第五に灸治療が盛んで、 第六に未病治を重視し、 第七に主訴にとらわれない個別的治療がある。 そして、 日本鍼灸は多様性が大きいのも特徴で、 それを是として甘んじてきた弊害がある。
西洋医学は個別化はデカルト科学に馴染まないため標準化を目指す。 また、 人体全ての機能を体系的かつ動的に分析することは不可能なため、 病態把握においては病因論であるのに治療ではアロパチーという対症療法に終始している。
 アロパチーは反対の治療をすることで、 体温が高ければ原因は無視して解熱する。 血圧や血糖値もしかりである。 東洋医学では、 免疫力を高め、 菌やウイルスの活動を制限するように体温を上げる治療を行う。 どちらがより本質的かは自明である。
 少子高齢化により、 高齢者に優しく安全で自然治癒力を高め、 予防に有用でかつ経済的な鍼灸は今後需要が増加すると予想される。
 しかし、 現実は減りつつある。 それは国民だけでなく病医院における需要も減っている。 消費者 (国民・病医院) ニーズの分析を怠り、 自らを変革してこなかった証左でもある。 これには卒前・後の教育改革が必至である。

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© 2015 社団法人 全日本鍼灸学会
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