全日本鍼灸学会雑誌
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臨床体験レポート
脂漏性皮膚炎による頭皮落屑に対する中医学的鍼治療の効果
単一事例研究法による検討
佐々木 治子中村 真通
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2020 年 70 巻 3 号 p. 259-266

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抄録

【目的】成人の脂漏性皮膚炎は難治とされており、頭皮の落屑といった外見上の問題による精神的な苦痛は大きい。本研究では、脂漏性皮膚炎と診断され、薬剤、食事、サプリメント、シャンプーなどあらゆる方法を4年間試すも、頭皮の落屑に効果が出なかったという患者を対象に鍼治療を行い、その有効性について検討を行った。 【方法】四診により陽明実熱証とみなした40代男性患者に対し、治法を清熱生津・安神寧心として中医学的に治療を行った。使用経穴は、通導利水清熱を目的に陰陵泉・尺沢・肺兪・脾兪、泄湿熱を目的に曲池・陽陵泉・三陰交、疏肝理気を目的に太衝・合谷・膈兪、安神寧心を目的に内関・百会とした。刺入方向は腹部の緊張が緩む向きとし、置鍼は仰臥位30分、腹臥位10分とした。治療期間はX年 3月~8月の 6ヶ月間とし、介入期1、非介入期、介入期 2を各2ヶ月間とするABA方式で、施術は週 2回行った。落屑量については、就寝時肩より上の範囲に黒いタオルを敷いてもらい、翌朝タオルの写真撮影と落屑の形状の変化を記録した。合わせてデジタルスケールを用いて、落屑量を毎日計測した。そして、介入期と非介入期の落屑量の変化と 1ヶ月の平均値を算出し、結果を検討した。 【結果】落屑量は、介入期1:3月0.379g、4月0.047g、非介入期:5月0.050g、6月0.135g、介入期2:7月0.031g、8月0.026gとなった。介入期1では治療 2ヶ月で減少し、非介入期 2ヶ月目には 2倍以上に増えた。介入期2では再び減り、最終月は最も少なくなった。 【考察】弁証論治、刺鍼の方法、置鍼時間が落屑量の減少に作用したと考えた。 【結語】定期的な鍼治療は、脂漏性皮膚炎に効果のある方法の一つとして示唆された。

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