全日本鍼灸学会雑誌
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術前投与方法の相異によるDPAの鍼鎮痛増強効果についての臨床的検討 (第1報)
河内 明北出 利勝木村 邦夫桂川 鉚一郎豊田 住江平井 清子御厩 恵利子兵頭 正義細谷 英吉
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1985 年 35 巻 3-4 号 p. 182-187

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抄録

われわれは, さきに, D-フェニルアラニン (DPA) が, 鍼鎮痛効果を増強することを疼痛閾値の上昇より実験的に立証したことを報告してきた。今回は, 当麻酔科外来での慢性腰下肢痛患者を対象にDPAの術前投与法の違いによる効果を検討した。すなわち, 第I法は前日投与群 (1.5g 分3), 第II法は当日投与群 (4g) とし, これを偽薬投与群の設定により, 二重盲検法にて検討した。
対象は罹病期間が3ヵ月以上の慢性腰下肢痛56例で, DPAの投与方法を2つに分けた。その (1) は, 1.5gを3回 (鍼治療前日の夕食後0.5g, 就寝前0.5g, 治療当日の朝食後0.5g) に分けて行い, 投与方法 (2) は, 4g (鍼治療前30分) を経口投与した。鍼治療は低周波置鍼療法を用いた。26例に対しては, (1) の投与方法で行い, 30例に対しては (2) の投与方法で行った。各々について「DPA+鍼」を2回,「偽薬+鍼」を2回, 計4回行い「直後効果」を数値スケール法によって両群を比較した。一方, ボランティア3名にDPA 4g・1.5gを内服させ, 2時間後, 4時間後及び翌月の血漿フェニルアラニンの経時的変動を調べた。
その結果, 投与方法 (1) では,「DPA+鍼」(26例) 著効7.8%, 有効69.2%, やや有効19.2%であり (偽薬群に比べて有意), 投与方法 (2) によれば,「DPA+鍼」(30例) 著効23%, 有効37%, やや有効20%, 無効20%であった (偽薬群に比べて有意)。投与方法を比較すると, (2) より (1) の方が, 著効および有効を合わせると17%の増強を認めた。血漿フェニルアラニンの変動は4gの場合2時間~4時間後に高値を示し1.5gの場合は2時間後に高値を示した。
われわれは, DPAの投与方法 (投与時期と投与分量) に関して臨床的な検討を行った。すなわち, 投与 (1) の方法と, 投与 (2) の方法との効果を比較すると, 慢性腰下肢痛における鍼鎮痛効果は, 当日投与よりも前日投与の方が, より効果的である傾向がわかった。症例数が少ないために再検討の余地はあるが, アメリカのエーレンプライスの提唱どおりDPAが slow onset, long acting に効果を発揮することに鑑み, 前日から分割して投与する方が望ましいと言える。

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