全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
鍼灸医学の成果に関する展望
大島 良雄
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 36 巻 3 号 p. 143-151

詳細
抄録

鍼灸に関する文献は最近10年間の方が昭和50年より前20年間より多く, 内容が抄録されている文献数も著増した。科学的にレベルの高い論文も最近着々増加しているが, なお全般的に論文の質の向上が望まれる。
東洋医学技術研修センターで鍼灸治療を受けた2000例と埼玉医大東洋医学外来の465例とにつき, 臨床的検討を行った。
両施設とも女性患者がやや多く, 中年以上の患者が中心で, 発症から来院まで1年以上を経過した慢性病が多い。腰痛, 肩こり, 肩腕痛, 頭痛, 下肢痛, 耳鳴り, 足の冷えなどの主訴が多かったが, これらの病状の緩解, 除去は高齢人口が急増中のわが国において Quality of life の改善, 向上に役立つものと思われる。
鍼灸療法は物理療法に属する。血圧に関して物理療法の原則である Wilder の law of initial value が妥当すると思われるデータがあるが, 鍼刺激の反復からなる鍼治療に際し生体反応がどのように推移するのか, 治療回数と治効率との関係を検討し, 一部に生物リズムに従いながら, 順応が行われてゆくのではないかと思われる所見を認めた。

著者関連情報
© 公益社団法人 全日本鍼灸学会
次の記事
feedback
Top