1986 年 36 巻 4 号 p. 288-293
健康者16名を対象に, 握力を減弱させた筋肉に対し, 鍼の刺入方向による効果の相違を研究した。筋線維の走行に対し約45°に鍼を入れるものを交叉刺, 筋線維に平行に鍼を入れるものを平行刺とした。1) 握力計の連続把握で握力を減弱させ, これに対し, 交叉刺群と鍼をしない放置群を比較すると, 交叉刺群では握力の減弱が著明に少なく, 握力減弱に対する抑制効果に有意差が認められた。2) 同方法で交叉刺群と平行刺群を比べると, 交叉刺群では平行刺群より著明に握力減弱の抑制効果がみられた。3) 上記1) の放置群と2) の平行刺群を比べると, 両者には, ほとんど差がなく, 平行刺は鍼をしない場合と同様であった。したがって, 骨格筋に対する施鍼の方向は, 効果に重要な意義のあることが判明した。