1987 年 37 巻 4 号 p. 300-305
消化器系の器質的な変化はなく, 主として機能的な便秘症と診断された17症例を対象に鍼治療を行ない, 初診時と治療開始1か月後における自・他覚所見の比較検討を試みた。
その結果, (1) 便秘とそれに伴う不定愁訴に対して, それぞれ58.8%, 58.0%の有効率を認めた。また, (2) 腹部サーモ像の改善から鍼刺激は全身的に自律神経機能を安定させる傾向があり, このことが自律神経失調的な愁訴の改善と大きな関連性を持っていることが推察された。したがって, (3) 便秘症に対する鍼の治療効果は, 生体の全機性, 特にその中でも自律神経機能を介するものであると言える。