1988 年 38 巻 4 号 p. 423-428
われわれは, 何らかの基礎疾患をもち, かつ“手足の冷え”を主訴とする21例の冷え症患者を対象に鍼灸治療を行い, 初診時と10回目の治療時とで自他覚所見を比較検討した。
その結果, (1) 自覚的には, 手足の冷えに対し有効率は55.9%で, 冷えの改善とともに随伴症状も緩解した。(2) 一般的に冷え症は健常者に比し, 下腿部から足部にかけて皮膚温が低く, しかも主訴に合致した身体部位に皮膚温の低下が認められた。(3) 鍼灸刺激は, 末梢循環動態に強い影響を及ぼすことから, 鍼灸治療は自覚的な冷えの改善に対し有効な治療手段の一つと言える。