1991 年 41 巻 3 号 p. 346-352
3,000m以上の高地では低酸素, 低圧・寒冷などの高地環境のために, 頭痛をはじめ意識障害, 運動障害をひきおこす高山病が発生する。そのため高山の登山時にはその対応が求められるものである。そこで施灸が高山病の予防に如何に役立つかを登山者を対象に生理的変化をとらえて種々の検査を行い検討した。その結果脳のような高次機能への疲労が観察され, 施灸により疲労の進行を抑制することが認められた。一方生理的変化においては施灸の効果は明らかには認められなかった。これは生体にはかなりの個人差があり, 施灸刺激でその個人差をカバーする迄の効果を及ぼすことは不可能であった。