1993 年 43 巻 3 号 p. 109-114
前立腺肥大症にともなう排尿障害に対する鍼治療の有用性について検討した。症例は, 前立腺肥大症I期と診断した70歳男性で, 治療は中〓穴に60mm24号ディスポーザブル鍼にて10分間の捻鍼を行った。治療回数は一週間に1回合計5回施行した。評価は, 尿流量測定 (Uroflowmetry: UFM) によって得られる平均尿流量率 (Average flow rate: AFR), 最大尿流量率 (Maximum flow rate: MFR) および尿流曲線 (Flow curve: FC), を鍼治療前, 終了後および鍼治療終了後1年時に観察した。AFRは, 鍼治療前3.2ml/s, 鍼治療終了時11.4ml/s, 鍼治療終了後12カ月時2ml/sであった。MFRは同様に10ml/s, 20ml/S, 10ml/Sであった。FCは, 治療中のみ正常パターンを示し, 治療前と12ケ月後は閉塞パターンを示した。前立腺肥大症の排尿障害に対する中〓穴の鍼刺激は排尿障害を改善させるが, 治療を中止すると排尿動態は治療前に復する傾向が観察された。