抄録
鍼体に付着したC型肝炎ウイルス (HCV) が、綿花で鍼体を拭うことにより除去できるかどうかについて検討した。抗HCV抗体陽性の血清に鍼体を浸漬し、その後、乾綿もしくは80%エタノール綿花でその鍼体を拭った。この鍼体からRNAを抽出し、HCVゲノムをRT-PCR法を用いて増幅した。その結果、HCVのゲノムは乾綿で拭った鍼体からは検出されなかったが、80%エタノール綿花で拭った鍼体からは2度の実験のうち1回は検出された。更に、我々はHCV陽性患者に対して鍼治療を行った後、抜針した鍼にウイルスの付着が認められるかどうかについても検討した。80%エタノール綿花で刺鍼部位を押さえながら抜鍼した鍼体からはHCVゲノムは検出されなかったが、抜針のみの鍼体からは2症例のうちの1症例においてHCVゲノムが検出された。それゆえ、綿花で鍼体を拭うことは鍼体に付着したウイルスを減少させる効果を期待できうるかもしれないが、一部の実験では払拭後もウイルスの残存が認められたことから、完全にウイルスを除去できるものではないと考えられた。