全日本鍼灸学会雑誌
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ラット阻血下肢への鍼刺激による筋血流量の変化
小田 剛今井 賢治新原 寿志咲田 雅一
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2004 年 54 巻 2 号 p. 163-178

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抄録

【目的】人為的に阻血にしたラット下肢への鍼刺激が, 筋血流・筋重量・筋動態にどのような影響を及ぼすかを, 更に上記における鍼刺激の最適条件を検討した。
【方法】SD系雄性ラットの右大腿動脈を切断して, 阻血にした下肢の前脛骨筋に40mm, 20号のステンレス鍼を3~5mm刺入して鍼刺激を行った。鍼刺激の方法は置鍼または鍼通電とし, 各種の刺激 (置鍼5h/day, 鍼通電5h/day, 鍼通電1h×5回/day, 鍼通電15min×5回/day, 鍼通電1h/day, 鍼通電15min/day) を5日間連続して行った。切断7日後に放射性マイクロスフィア法で血流量を, また健側肢に対する阻血肢の重量比から筋萎縮の程度を確認し, 無処置群, 阻血群, 阻血+置鍼群, 阻血+各種の鍼通電群で比較した。さらに前脛骨筋の筋線維の状態を観察するために染色を行った。
【結果と考察】無処置群に比べて, 阻血群では明らかな筋血流量の低下が認められ, 阻血に鍼通電を加えた群では血流量の増加を確認した。5h/day, 1h×5回/dayといった長時間の鍼通電は血流量の増加を引き起こす一方で, 筋重量比は低下していた。しかし15min×5回/dayの刺激では, 他群に比べ顕著に筋血流量が増加し, さらに筋重量比の変化はなく, 筋萎縮を引き起こさないことが確認された。また染色結果から阻血群に比し, 毛細血管新生所見とVEGF (Vascular Endothelial Growth Factor) 産生所見が見られ, これらが血流量増加に大きく関与していることが示唆された。

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