全日本鍼灸学会雑誌
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大学生の肩こり被験者を対象にしたトリガーポイント鍼治療の試み
肩こりに関するアンケート調査と鍼治療の効果に関する臨床試験
伊藤 和憲南波 利宗西田 麗代河本 真越智 秀樹北小路 博司
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2006 年 56 巻 2 号 p. 150-157

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抄録

【目的】肩こりは性別や年齢を問わず有訴者の多い疾患の1つであるが、大学生を対象とした報告は少ない。そこで、大学生を対象に肩こりに関するアンケート調査を実施するとともに、鍼治療の効果を検討した。
【方法】明治鍼灸大学の学生509名を対象に (1) 肩こりの有無、 (2) 肩こりの発症時期、 (2) 肩こり以外の愁訴、 (4) 肩こりによる医療機関受診の有無など7項目に対して、アンケート調査を無記名の用紙項目法で実施した。また、アンケート調査で肩こりが存在すると答えたものの中でインフォームドコンセントの得られた30名を、 (1) トリガーポイント群、 (2) 経穴群、 (3) Sham群の3群に群分けし、週1回間隔で4回の鍼治療を行った。効果の判定は主観的な肩こりの強さをvisual analogue scale (VAS) にて評価した。
【結果】アンケートの有効回答率は64.6%、回答者の年齢は18-33歳であった。肩こりを自覚していたのは全体の61.9%であり、その25.8%が高校生から肩こりを自覚していた。また、肩こり以外の随伴症状としては眼精疲労や頭痛が多いが、医療機関を受診しているものはごく僅かであった。一方、肩こりに対する鍼治療の効果に関しては、治療前に比べて治療終了後にトリガーポイント治療群のみ痛みが軽減する傾向にあった。
【考察】肩こりを自覚している者の多くは高校生から大学生にかけて症状を自覚し、その半数以上は肩こりのみならず眼精疲労や頭痛などの不定愁訴を訴える傾向にあった。一方、鍼治療に関しては、トリガーポイント治療が肩こりの軽減に有用であると考えられた。

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