2006 年 26 巻 5 号 p. 516-521
近年, 電子カルテの普及に伴い, 副次的に自動麻酔記録装置の導入が加速している. 自動麻酔記録装置自体, モニターからの数値入力を麻酔チャートに展開する程度のものという認識のうちはそれほど魅力を感じないが, ネットワーク接続により新たな展開が見えてきた. 一方, 麻酔科医の単なる道具であった麻酔器だが, 近年では種々のセンサーの搭載と電子制御により, 道具というよりむしろ電子機器という側面が強くなっている. 電子化された麻酔器から出力される情報を統合活用できれば, 医療現場における大変革となる可能性がある. 麻酔器がきちんと動作していた証拠をタイムスタンプ付きで残せば, 訴訟対策となり, 麻酔器からの数々のパラメータ (IN/OUTの麻酔薬濃度やガス流量など) を生体モニター情報とともに統合すれば, クリニカルナビゲーションや正確で質の高い臨床研究, 臨床治験が可能である. 自動麻酔記録装置の現在と将来像, 現在の麻酔器の限界と将来のあるべき姿, そして, 相互の発展にそれぞれがどうかかわるべきかを論じた.