2008 年 28 巻 7 号 p. 945-950
66歳のアルコール依存症患者が上腕骨骨折, 右膝蓋骨骨折の全身麻酔手術後, 覚醒せず術後3日目に死亡した. 手術翌日施行したCT, MRI, MR-Angiography (MRA) 検査で, 椎骨脳底動脈領域の脳梗塞と診断された. 剖検の結果, 死因はすでに存在していた右房内血栓が, 卵円孔を通過し奇異性塞栓を生じ, 中脳, 橋, 小脳の多発性脳梗塞を起こした可能性が高いことが判明した. 術前に卵円孔開存を診断することは, 最も診断能が高いとされるコントラスト経食道心エコーを用いても難しい. 不幸な転機をとった症例であり術前診断の限界を感じたが, 覚醒遅延の原因検索に問題が残った.