日本整形外科学会は2008年に予防ガイドラインの整形外科部分を改訂し,高リスク手術での予防にはエノキサパリン(EXP)とフォンダパリヌクス(FPX)を含んだ薬物的予防法を機械的予防法とともに推奨した.人工股関節・人工膝関節全置換術,股関節骨折手術ではEXPとFPXが使用可能であるが,外傷症例では,合併損傷部位からの出血リスクもあり,一律に薬物的予防法を適応できない.どの予防法を行っても静脈血栓塞栓症(VTE)をゼロにはできないし,予防法のリスクも存在する.医療にリスクはつきものであるが,患者や世間はこれを認識しない.日常診療で十分な説明を行うことは大きな労力を伴うが,インフォームドコンセントを取ることが整形外科医の唯一の自衛手段と考えられる.