2011 年 31 巻 1 号 p. 098-106
交感神経の抑制が心保護につながることはよく知られており,迷走神経を活性化することは相対的に交感神経を抑制し,心臓に保護的といえる.ただ,過度の迷走神経刺激は循環虚脱を招く危険があり,臨床においては交感神経とのバランスに留意しなければならない.迷走神経のもつ心保護的な作用に伴う循環への影響を最小限にとどめるためにはそれぞれの神経により活性化される心筋細胞内の個々のシグナル伝達因子に着目し,それぞれに効果をもたらす薬剤の組み合わせを研究することが今後の課題となると考えられる.