日本臨床麻酔学会誌
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日本臨床麻酔学会第30回大会 特別企画 ─若い麻酔科医に聞かせたい私の失敗学─
「心配」は「失敗」を償うか
土肥 修司飯田 美紀
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2011 年 31 巻 4 号 p. 641-649

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抄録

  臨床麻酔は,手術侵襲という激しいストレスから生体を保護し,臓器機能異常を治療・修復することを目的としている.そこには,知識と技術と経験が必須である.患者の生命を第一とする姿勢には麻酔科医としていささかの揺るぎもなく,患者中心であることと,外科医に最良の手術環境を提供するという視点には迷いもなかった.だが,過去の約40年間,私は心配性の麻酔科医で,「患者の惨事の原因となる事故を起こさないよういつも心配しながら麻酔をかけて」いたように思う.それにもかかわらず,ここに紹介した3例はいずれも大事に至らなかったけれども,落ち度があり,それ故に一時は深く落ち込み,私自身は重大な教訓を得た.医療事故につながる失敗が起こる背景には,(1)知識不足,(2)技術力不足,(3)経験不足,(4)手順,ルール違反,(5)偶発,が関係するものの,多くは何かしらの,(4)手順,ルール違反(手抜き)が背景にあったのである.

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© 2011 日本臨床麻酔学会
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