2013 年 33 巻 2 号 p. 272-278
産科出血は依然としてわが国の母体死亡の主要な原因である.産科大量出血による母体死亡を防ぐためには,凝固障害の程度を即時に評価し,かつ凝固障害の原因が消費性であるか希釈性であるかを鑑別することが重要であるが,従来の凝固機能検査は迅速性に欠け,原因の鑑別にも十分に役立たない.血液弾性粘稠度を測定するThrombelastography(TEG)およびThromboelastometry(ROTEM)はともに手術室内(Point of Care)で測定できる凝固機能検査であり,産科大量出血時の有用な止血・凝固系のモニターとして注目されている.しかし妊婦での正常値は十分に研究されておらず,治療を開始すべき異常値に関しても十分なコンセンサスが得られていない.これらのモニターを用いて産科出血の予後を改善させるためには,さらなる研究が必要とされている.