抄録
麻酔科医は喫煙患者では周術期管理に苦慮することを経験してきた.喫煙は呼吸・循環機能を含め全身に影響を与えることは広く知られているが,周術期禁煙の意義は十分には理解されていない.周術期においては,喫煙者は非喫煙者に比べ,死亡,肺炎,予期せぬ気管挿管,人工呼吸,心停止,心筋梗塞,脳卒中等の死亡率・術後合併症のリスクが高くなることが示されている.最近では術前の禁煙期間が1週間長くなると,術後合併症が19%減少することが報告されているので,できるだけ早く術前禁煙を達成させることが大切である.ここでは周術期禁煙の意義を示すとともに,手術直前まで喫煙している患者に対する麻酔管理をいかに行うべきかも含めて提示する.