抄録
われわれ麻酔科医が行う手術麻酔の本質は,「手術という侵襲」から患者を守ることである.緩和ケア・緩和医療の本質は,「病気という侵襲」から患者を守ることではないだろうか.病気の時期にかかわらず,患者や家族,そして治療スタッフをも含めて,安心して治療と療養に専念できる環境を提供することが求められている.侵襲制御医学の専門家としての麻酔科医には,周術期に限らず,高度な技術と心を提供できる領域が広がってきている.麻酔科医にしかできないくも膜下鎮痛法を例にして,麻酔科医が緩和ケアにいかにかかわるかを検討する.