日本臨床麻酔学会誌
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日本臨床麻酔学会第35回大会 招請講演
麻酔科医から緩和医療医へ
竹中 元康
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2016 年 36 巻 5 号 p. 544-549

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抄録

麻酔科学は,外科手術を円滑に行うために登場した医学・医療の一分野であり,疾患,手術操作,薬剤に対する生理的反応をコントロールし患者の安全と快適を目指す領域である.一方,緩和医療学は生命を脅かす疾患に起因した諸問題に直面する患者・家族に早期より関わり,苦痛の予防と苦痛からの解放を図りQuality of lifeの改善を目指す領域である.麻酔科学と緩和医療学,急性期と慢性期,蘇生と看取りなどまったく相いれない領域のように考えられるが,痛みの軽減(鎮痛),鎮静,呼吸循環動態の安定,ストレスの軽減を図るなど実際には共通点も多く認められる.がんの痛みは患者のみならずその家族にとっても重大な関心事であるが,十分とは言えないことも多い.麻酔科医は鎮痛や鎮痛手段に精通しており,疼痛コントロールについて特別なスキルを持ったエキスパートであるため緩和ケアにおいても重要な役割が果たせると考える.今後,わが国においてより良い緩和医療を提供するためには緩和ケアのスペシャリストのみではなくプライマリー緩和ケア医を育成することが重要である.

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© 2016 日本臨床麻酔学会
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