2016 年 36 巻 5 号 p. 629-631
臓器移植患者に使用する麻酔薬を選択する場合に焦点となるのは,機能が廃絶した臓器に対する麻酔薬の臓器毒性と虚血再灌流障害に対する麻酔薬の臓器保護作用の2点である.臓器毒性という観点からは,デスフルランは低い生体内代謝率のため,ほとんど代謝を受けず生体内で安定であり,肝機能や腎機能への影響は小さいと考えられる.また臓器保護作用としては,デスフルランもセボフルランと同様にプレコンディショニング効果が報告されている.また,デスフルランは血液/ガス分配係数が小さく,覚醒が早いため,臓器を問わず移植術後の早期抜管を目的に使用されることも多い.