2017 年 37 巻 1 号 p. 81-87
東日本大震災などの大災害をきっかけとして,各施設の防災に対する機運が高まり,対策が講じられている.しかし,いくら対策を議論していても実際の運用時に戸惑っていては,その対策が有効であるとは言いがたい.手術室での災害時には自身の身の安全を守ることはもちろんだが,手術を受けている患者を蔑ろにすべきではない.麻酔科医は,手術室での事態を掌握し適切に対応する舵取りを担っている.単独の手術室のみならず複数の手術室すべてのリーダーシップを取る必要がある.このため,手術室特有の構造とともに災害時に講ずべき対策を理解する必要がある.災害時には手術室全体のリーダー(インチャージ)は,医療機器の損傷具合などの各部屋の状況を掌握し,病院からの指示を受け,適切な判断の下に手術室全体の指示を出す.災害状況との兼ね合いで,現在進行中の手術を継続あるいは中断すべきかの判断を個々の状況に応じて下すように関連各所と連携を取る必要がある.緊急時に適切に対応するためには,災害対策マニュアルに従って,日々の訓練を行うことが重要であり,緊急時の対処は,対応の不足や混乱などがないようアクションカードに従うべきである.「手術医療の実践ガイドライン(改訂版)」に記載された事項を抜粋して解説していく.