2017 年 37 巻 3 号 p. 305-310
術前の痛みの有無が術後痛に与える影響を,IV-PCA(intravenous patient-controlled analgesia)のボーラス投与回数により後方視的に検討した.症例は2015年4月から12月までに福岡徳洲会病院で行われた開腹手術51例とした.術当日の術前の痛みの状態をカルテから判断し,有痛群(26例)と無痛群(25例)に分けた.術後はIV-PCAによる鎮痛を行い,PCA終了までのボーラス投与回数を集計した.【結果】ボーラス投与回数は,有痛群で6±6回,無痛群で10±8回で,有痛群で有意に減少していた(P=0.02).有痛群はすべて緊急手術であった.【結語】有痛群では,無痛群に比較して術後の鎮痛薬の必要量が減少していた.術後鎮痛薬の必要量の減少には,術前の痛みが緊急手術を要する急性痛であることが影響した可能性が考えられた.