日本臨床麻酔学会誌
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日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─術後痛管理の役割:NRSの先にあるもの─
優れた術後痛管理は高齢者の術後認知機能障害の発症を予防できるか?
河野 崇
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2017 年 37 巻 5 号 p. 630-636

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抄録

急速な高齢化社会の進行に伴い高齢者の手術が増加する一方で,術後認知機能障害(postoperative cognitive dysfunction:POCD)の問題が注目されている.POCDと類似する術後認知障害として術後せん妄(postoperative delirium:POD)がある.POD/POCDの発症は,退院後のQOL低下や就労困難のみならず,死亡率増加にも関連することが報告されている.POD/POCDの最も重要な危険因子は高齢である.POD/POCDの発症機序は不明で特異的な予防方法がないのが現状であるが,高齢ラット開腹手術モデルでは適切な術後鎮痛はその方法に関係なくPOCDの発症を予防できることが示されている.本稿では,優れた術後鎮痛は,患者の満足度を向上させるだけでなく,特に高齢者において短期的および長期的な認知機能障害を予防できる可能性について考察したい.

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© 2017 日本臨床麻酔学会
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