2017 年 37 巻 5 号 p. 637-642
術後痛は,組織損傷による炎症や神経損傷のみでなく,麻酔・鎮痛法や患者背景の影響を受け,手術部位感染や創傷治癒といった術後回復のアウトカムとも関連している.不適切な術後鎮痛は,遷延性術後痛への移行を助長する可能性が示唆されているが,一方で術後急性期に用いるNSAIDsやオピオイド,局所麻酔薬は免疫抑制作用を有しており,鎮痛目的で炎症を抑えてしまうことにより,術後感染のリスクを増加させる可能性が指摘されている.本稿では,術後痛と手術部位感染の関連について最近の知見を紹介し,周術期鎮痛法の術後回復への影響を概説する.